2019年2月28日木曜日

以銭為飾(銭を飾りとする)② 苗族(ミャオ族)


銀細工を調べていると
チベット〜ミャンマー、そして中国に影響されたデザインを多く見ます。

苗族、ヤオ族、ラフ族、リス族、アカ族など
多くの民族が似たようなデザインの銀細工を着けています。

そしてまた違う装飾文化も持つカレン族や
タイの原住民といわれるラワ族など...


きっと移動移住する内に民族間の交流があったのだろうか...
(ここは憶測ですが)

まずは苗族 ミャオ族から調べることにしました。






紀元前三世紀頃
苗族は中国に発生したといわれています

苗族 ミャオ族とは
漢族が当時つけた差別的用語

自身の事はHmong族(モン族)と名乗るそうですが
タイのモン族との関連はありません。

最近では
ミャオ族=モン族という方も多い様ですが
今回は苗族 ミャオ族とよびます。





1413年 明の時代
銀貨が中国で流通し始めます。

「銀貨を持たなくとも、銀を身につけてさえいればいい」

という考えが苗族に広まり、加工し身につけ始めたのが苗銀の始まりといわれています。



以銭為飾(銭を飾りとする)という習俗


苗族は1413年以前よりこのような習俗があり、
銀貨が流通した後もこの習俗が消える事はありませんでした。


清の時代
鉄細工職人から転身した銀細工職人が数多く出現

銀細工職人はデザインを婦女衣服の刺繍文様から学んだといいます。

婦女衣服の刺繍文様
その中には、生育や宗教的な祈願などを針と糸で表現していました。


宗教施設の無い貧しい地域では、願いのこもった刺繍を施したその衣服を
一日中肌身離さず生活の中で共にする事で
事実上、呪術的行為を表す事が出来ました。

同性愛が禁止された際には
代わりに未婚女性が若い男性を引き寄せる為に銀装飾で着飾り、
美しさや財力を解りやすく提示しました。

言葉や文字が無い表現に制限のある民族だからこそ
その造型に対しての心理的強さは益々増したのでしょう。


こうして
あらゆる装飾を身につける行為は
身につける民族の生活の中の美への需要を満たすとともに
文化的欲求をも満たす物へと変化していきます。



表象レベルは変化し

「大きいものは美しい」
「多い物は美しい」
「重い物は美しい」

とい三つの新しい概念、芸術的特徴を生み出します。


そしてペアで必ず使う。
装身具はより体と深く結びつき、実を守るという機能や呪術的考えが
強く意識されていました。


こうして民族達は、

自己美化
アイデンティティ
アニミズム
財力提示
の為にこれでもかと沢山の銀を装飾し始めます。


そんな民族化の過程で、中原地域(漢族)の文化を合理的に取り入れ改良します。
当時、苗族の職人は漢族の銀細工職人を師と仰いでいたそうです。


こうしてうまれる民族間の垣根を越えた文化間の融合
きっと時代や移住と共に改良され、民族個々に新しいものがうまれたのでしょう。

苗族は過酷な自然環境の中
銀飾民族へと変化し、中国の文化遺産へと変化していきます。



そんな苗族は
1800年代漢族の進出によって南への移住が始まります。

ラオス〜タイへ


焼畑農耕や阿片問題
第一次第二次世界大戦

様々な民族独自の問題、また社会的問題が民族達にも降り掛かる事になります。


そして現在


そんな苗銀も
職人は減少
現在の市場は街中のマーケットへと需要が代わり
素材は安価な白銅

市場需要から、形は奇抜な物へと変わり
工芸品やお土産へと変わってしまったものもあります


これが民族の新しい形
現代社会の現実なのかと
ですが、便利な現代社会で生活をしている自分自身が居るのも事実
なんとも言葉にできない気持ちになります。



現在のカレン族からうまれる
カレンシルバーも
同じ部分があるかもしれません。

1800年代のインドルピーコインシルバーとは
違いメキシコ産の白い純銀
民族的とは到底いえない様なポップなデザイン


お世話になっている
カレン族の銀細工職人男性は携帯を使い
ラワ族のデザインを取り入れていました

どこからラワ族の情報を取り入れたのかは不明

籠を編む事が出来る老人は籠編みはもう面倒だと言い
家の中にはカラフルなプラスチックが溢れ
皆、Tシャツに時計やティアドロップサングラス
車やモーターサイを乗り回していました。
観光化されたビレッジ内には病院、学校などいき届いた施設環境


生きてきた歴史の中で
きっとそれが、今生きる苗族、カレン族のリアルな姿

現実を目の当たりにしました。


安直かもしれませんが、そんな中売る為に作られていなかった時代の
カレン族装身具のデザインを復刻する事が出来て良かった
挑戦して良かったと思います。

素材が当時の物と違っても
100年前のデザインがまだ残っている、伝承されているという事実を実際に村へ行き、
知る事が出来ただけでも嬉しく思います。


ライスビーズのデザインもそうですね。


きっと
私の様な日本人がくる様になったのも
時代の流れの中の変化でしょう



民族の歴史を知ると色々な発見があります。


少し脱線しましたが、
少数民族 苗族の
銀飾の始まり、そしてその装飾意味などをご紹介しました。


私自身
民族達の装身への強い思いや願いを
ほんの少し理解する事が出来て良かったです。


お付き合い頂きありがとうございました。















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